Amazon Dashに飽きないで!

今回は旦那が記事を担当します。

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先週日本に出張し、仕事関係者がAmazon Dashボタンを試しているのを見てきました。システム関係では割と話題になっているようで。

ご存知の通り、アメリカ版のAmazon Dashボタンは2015年春に発表されその後どんどん種類を増やしております。また単純な発注用ボタン以外にも補充発注用のReplenishmentボタンも同時期に発表されております。まもなく満2歳です。
更にAmazonはDashボタンを汎用化させた「Amazon IoTボタン」も発売しています。こちらはプログラムを記述することで「ボタン一発でなにかする」仕組みを構築できるみんな大好きIoT(Internet of Things)です。


Amazonというと多くの人は「オンライン物販の会社」と思われるかもしれませんが、実は収益の大黒柱は「クラウドを軸としたシステム事業」です。11月下旬にラスベガスで開催されたカンファレンス”Amazon re:Invent“には世界各国から24000人が参加し、日本からも600人以上が来ていました。参加者数からもわかるようにAmazonのクラウドシステムは世界中で活用されています。
これを語りだすと長くなるのでまた改めて。

(カンファレンスのおみやげで配布されたAmazon Echo Dot)

今回はそのAmazonのシステム事業の一環という視点からAmazon Dashボタンについて解説したいと思います。
日本でサービス開始が遅れたのは協賛企業を説得するのに手間取ったのかはたまた技適マークを取るのに手間取ったのか。外野からはわかりませんが米国在住組からすると「ちょっと遅いよね」と思った次第であります。

そのDashボタン、巨大流通業Amazonからすると売り上げ貢献率は微々たるものです。
すこし古い数字ですが、2016年6月に公開されたFortuneオンラインに売り上げを推定できるヒントが載ってます。
Amazon Touts Dash Numbers, Adds Brands Amid Questions On Usage
http://fortune.com/2016/06/28/amazon-dash-new-brands/)

The company now says it gets two orders per minute through the buttons—or 2,880 daily—compared to once a minute in March, or 1,440 daily.
Amazonによれば、Dashボタン経由の注文は毎分二件すなわち「一日あたり2880件」で、これは…

Dashボタンで注文できる商品は様々ですが、1つ30ドルとしても1日あたり8万ドル強の売り上げにしかなりません。Amazonの売り上げは年間1000億ドル程度ですから、Dashボタンは売り上げの0.3%程度しか貢献していないことになります。アメリカも日本同様超低金利が続いていますがそれでも銀行預金の利息は0.9%つきます。
なぜAmazonは銀行預金以下のパフォーマンスしかでないAmazon Dashボタンを「押して(推して)」いるのでしょうか?

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(画像転載元はこちら

これも米国では語られ尽くされた話ではありますが、Amazonは「各世帯に合わせた定期発注の最適化」を狙っているのです。
米国では”Amazon Subscribe&Save”、日本の「Amazon定期お得便の最適化」です。

米国では定期配送を選択することで5%から15%程度お得になります。ただし配送頻度は現時点では「月末のみ」ですから使い勝手はイマイチ。
例えば我が家ではLaundressの洗剤をSubscribe & Saveで定期発注していますが、月末にきっちり洗剤を使い切るということはまずありません。大抵は半月〜3週間程度で使い切りますからそれ以外でオンライン補充発注する必要があります。面倒。

一方、Dashボタンを使えば「特定のブランド」で「特定サイズ」の商品がどの程度の頻度で消費されるかをAmazonは知ることができます。これはとても貴重なデータです。
通常のオンライン発注では多数の商品をまとめて買いますから単品がどれくらいの速度で消費されるのかはわかりません。その人は「洗剤を買うついでにトイレットペーパーを買ったのか」それとも「トイレットペーパーを買うついでに洗剤を買ったのか」わからないのです。Amazon Dashボタンなら「この人はいつ、何が欲しかったのか」をピンポイントでつかめます。ここ大事ですよテストに出ますよそこの取締役のみなさん!

こうして全体からすれば微々たる量ではありますが、特定ブランドの特定商品の購買頻度データを蓄積していくことで、Amazonのデータサイエンティスト達は「購買パターンに応じた定期発注最適化」を実現する機械学習システムを構築してくることでしょう。

オンラインで洗濯用洗剤を検索すると
「この洗剤は毎月末に配送することで5%値引き。そしてお宅は柔軟剤を2ヶ月で使い切るでしょうから柔軟剤を隔月で配送することでさらに2%引きましょう。」
「なんなら台所用洗剤も隔月で配送する?さらに1%引きまっせ!」
みたいな感じで我が家にぴったりな定期便を提案してくる…などという世界がもうすぐそこまで来ているはずです。

ということでそこのAmazon Dashボタンを買ったけどもう飽きたという貴方! 飽きないでもう少し、未来のためにAmazon Dashボタンを使ってあげましょうよ。

Amazon Dashに飽きないで!

おまけ: 日本ではまだ販売されてないAmazon Echoや先日のカンファレンスのおみやげとして配布されたAmazon Echo Dot。
謎の煙突もしくは文鎮みたいなこのデバイスは音声認識機能を搭載しています。


(画像引用元はこちら

そして「Alexa, Order Smart Water」と語ってあげると!なんと!音声認識でSmart Water 6本入りが発注できてしまうのです!こちらも同様、特定商品の消費頻度を推定するために活用されていると思われます。

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お断り:本記事は筆者旦那個人の見解であり所属する組織団体の意見を代弁するものではありません。

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